[*[読んだ本] ]「星の王子さま」の深さ

昔、中学校か高校の図書室で見かけた「星の王子さま」を読んだ時は、さほど記憶に残らなくて、もっと言うと私には理解が出来ない内容だった。だから、そこからつい何年か前まで、この本の事を忘れていた。

すべては父が亡くなった後から、私の心というか、中身は本格的に動き出したように思う。それまで、だいぶ自分勝手に生きてきて、自業自得な行いをしてきて、ある時から急に大切なものを亡くして、そのショックや私の周りが変わっていった事をきっかけにして、私自身がどんどん変わっていた気がする。

様々な名作と呼ばれる作品がある中、私はほとんどを知らないでいると思う。そんな中で、サンテグジュペリの「星の王子さま」は、出会うべくして出会っていて、ずいぶん遠回りをしてしまったけど、また出会えた。さらに子供の頃よりも理解力は上がっているおかげで、本を読んで胸にこみあげる思いと、何回読んでも涙が止まらなくなってしまう、なんとも喩えられない寂しさやせつなさ、ほんのりと心が温かくなるような、相反する気持ちになる本として、おばあちゃんになってもきっと時々読むと思う。



Youtubeでは、朗読バージョンがあるのを、つい先日見つけたばかり。活字を追うのと違って、それもまた心地良い。いつも第8章くらいで寝ちゃうんだよね(笑)。睡眠学習か!というくらい、台詞を覚えかけそう。

わかりやすい言葉で、深くて心が洗われるような美しいお話だから、超ロングセラーになって、時代を経て読み継がれているんだよね。子供の頃理解も共感の1つも出来なかった私は、とんだアホだった(笑)。
私は、知り合った王子さまと別れることは耐えられない。理由を言われても納得できない。きっと誰もがそう思ったと思う。だけど、出会ったキツネや、王子さま自身の考える友情や愛情に触れた時、そして、王子さまのお別れの理由は、最愛のバラの元へ帰る為なら、それはきっと喜ぶべき事なのよね。でも、バラとのお別れのシーンと、「ぼく」と王子さまとのお別れのシーンは、何度読んでも涙が出るので、本が涙で濡れないように気遣って読んでいてもあぶない。

バラとのお別れについては、バラの気持ちでいると、自分自分もはっとする。こんな風に気持ちがすれ違わないようにしないとなって思う。王子さまも未熟だったから、バラの愛に気づけなかった事も、なんとももどかしくって泣けてきた。

そうかと思うと、何千本ものバラを前にした王子さまが、自分が愛するたった1輪のバラへの思いを言う場面なんて、格好良いの一言だった。幼い王子さまに芽生えた愛情が、一気に言葉で溢れてくるから、「あー、ここバラに聞かせてあげたいっ」って思う。小さい星にひとりだけ残されて、毎日泣き暮らしているかもしれないし、もう枯れてしまっているかもしれないような、はかなくて弱くてひとりぼっちのバラの事、王子さまが気づいて本当に良かった、っていう、安堵の涙のようなものも出た。

この本は、つまりは、人生や生き方、人間性を問うだけじゃなく、男女の仲についてまで触れている、児童文学とは思えない内容で、サンテグジュペリって凄いなぁと、この頃しみじみ感じてる。

要は、わたしって、「お別れ」と「報われる事」に関して涙腺が弱いのかな(^^;)。辛い事でどうしようもない事の苦しさと、それが後々生きてくる事がわかる事の葛藤というのでしょうか。お別れがわかりやすければ泣けるのかな(^^;)。別れる必要がないのに別れるというシチュエーションも、耐えきれなくて泣けちゃうってのもある。

てなわけで、心が汚れそうになったら、これを読んで浄化しようと、最近ますます思うようになりましたとさ。


星の王子さま 朗読