死に至る病 あなたを蝕む愛着障害の脅威

たしか、去年の秋くらいに買ったような(^^;) いやー、読み切るのに時間がかかってしまった~

 

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日本、いや世界中のあちこちは、経済的豊かさを追求する合理主義や、個人の利益を優先する功利的主義のもとで動いている。その代償として死に至る病が広がっている。

この本の読み始めには、キルケゴールの同名著書「死に至る病」について触れている。哲学者キルケゴール実存主義の元祖というか、パイオニアとして、未だにこの思想に多くの影響を与えた人だ。いろいろな思想家というか哲学者がいるが、キルケゴールは比較的読んできた中でも落とし込みやすい思想だと思った。

著書「死に至る病」では実存主義について説き、絶望について語っている。個々の存在の証明というか、人間の存在の真理を追究した先駆者である。

この本では、現代社会で増えてきた医学では解決ができない奇病(精神的な)の事を、愛着障害という言葉を使って説明している。

著者は精神科医で、多くの患者さんを通して、「死に至る病」について向き合ってきた方だ。

現代には精神的な「何か」が原因となり起きる病気が増えた。うつや過食症、拒食症などは代表的で、他にも多くの病気が蔓延するようになった。

本来人間は、良く食べて良く寝て、穏やかな世界にいれば、病気にはならないはずなのに、現代人は笑わない人が増え、生きづらさを覚える人が増えている。

生存する事や種の保存に多大な影響が出ているのに、常に時は流れていく。絶望して自ら命の火を消してしまう人の根本原因について、この本ではいくつかの例を挙げている。

もともと私が常日頃から生きづらさを感じていたので、ちょと読んでみようかなと思い立ったんだけどね。この10年くらいの間で加藤諦三を何冊か読んでみたので、ほかの方のも読んでみたくなったのもあり。

愛着障害の方々をどう救ったら良いのか、この先の将来を背負う今の若者はもちろん、苦しんだことのない人にも読んでほしいと思った。

私自身は、痛いくらいわかる部分と、未知の世界だった部分があり、読み進めていく中での言葉が時々難しいと感じたが、概ねわかったように思う。私はいつも、安定した愛着を探していた(いる)ので、より感じ取れたところはあったのかもしれない。それはまあよしとして・・・

健全な人間関係を築いていけたら、それを繋いでいけば、人は愛着障害などという悲しい言葉を使わずに済む。大切なことはどんどん遠くへと追いやって、合理主義を進んでいくこの国の未来がとても心配であり、私のように、私以上に孤独な心を持って生きていく不憫な人がもっと増えてしまう事は容易に考えられる。

もっとこの本が多くの人の目に触れたら良いのになとは思った。そして、愛着障害で苦しんでいる人たちには、それはあなたのせいではないんだよって言えたらなと思った。

私自身も少しだけ救われるような本だった。

 

死に至る病 (岩波文庫)

死に至る病 (岩波文庫)