[*[独り言] ]ある訃報

今朝、JRA(日本中央競馬)の青木騎手の自殺のニュースを知った。
かなり個性的でアグレッシブな人だという印象と、海外へ武者修行に積極的に行き、勉強熱心な人、藤沢厩舎所属時代は、上手い騎乗だけど、地味だなという印象だった。
以前CSの番組でゲスト出演した際は、かなり破天荒で気が強く、騎手としてのメンタル面の資質も持ってるなぁ、などと勝手に思っていた。
今回の事件によって、私は勘違いしていたようだとわかった。それは、青木騎手はメンタル面はとても弱かったのだなという事。

世間ではそんな話はこれっぽっちも取り上げてもらえなかったけど、今年JRAでは、近代競馬150周年記念という事で、かつて競馬を楽しんでいた方、競馬を知らない方、ギャンブルとしか思っていない方、すべての方に、競馬の楽しさを伝えて行きたいと思っていた。結局、せっかく立ち上げた別館競馬専用ブログをちゃんと更新が出来ないまま、この記念すべき年は終わってしまう事になった。

近代競馬の記念すべき年である反面、地方では、福山競馬の廃止が本当に決まってしまったという悲しい事もあった。他の地方競馬も、常にこういう危機の中で関係者が頑張っている。何も出来ないけれど、本当に食いしばって頑張って欲しい。


競馬の何がそこまで面白いのかとあらためて言われると、実は自分でも良くわかっていなかったりする。常に金欠な事が多い私が、少額の資金から、何十倍にも膨らませて家計を支えた事もあったし、そんな事は関係なく、好きな馬、好きな騎手、思い入れの強い事態によって、馬券を買う事もあった。

競走馬を影で支えるたくさんの人々、この人々がいなければ、そもそも競馬が成り立たず、どんなに血筋の良い馬がいたとしても、人がしっかりと面倒を見なければ、早く走る事はない。

レースで馬が本来持つ力を精一杯出せるように、アシストするのが騎手の仕事で、能力を最大限に引き出して、生産者や馬主さんに孝行するのも騎手の仕事。人同士のつながりがなければ、これまた成り立たない職業で、干される人も多いし、怪我でリタイアする騎手もいる。


ここ数年、多くの海外騎手が短期免許を取って日本へ乗りに来ている事で、ただでさえ騎乗依頼がなかなか来づらい若手騎手にとっては、年々この状況は厳しくなっている。この事で引退に追い込まれる騎手も、年間数名いるのは事実。けして騎乗が下手とか、そういうことではないと思う。(だって、下手だなって思う騎手が、堂々と居残れるもん)青木騎手は、何が自殺の直接的な引き金になったのかはわからないけれど、このような事態に直面していた事は、原因の1つとして入っているといえるだろう。

それでも、こんなに大変な状況の中で、見事に生き抜いている騎手もたくさんいる。例えば、私が日ごろ応援をしている幸英明(みゆきひであき)騎手が、GIを含めて年間の重賞勝ちが少なかったとしても、コンスタントにフルで乗せてもらえるのはなぜか、私がわざわざ言わなくてもわかることだろう。1年で1000回以上の騎乗回数があるという事は、いくら「継続は力なり」といっても、幸騎手が一人で出来る事ではない。「乗りたいから、乗せて」で終わる話でもない。どんなに偉くなっても、ベテランの域に入っても、奢りなくまい進する姿。だから幸騎手が大好きなのだ。

勝負の世界だけでなく、これは個人で働く人や、似た環境の人、フリーランスの私でさえ日々感じる危機感と同じであろう。
実力だけでは成り立たない世界でもあると思うし、実力があればもちろんそれに越した事はない。だからといって生活の保障はない世界。騎手であれば、新人時代に世話なった所属厩舎を離れて、フリーとして活動をすると決めた時から、終わらない勝負が始まっているように思う。

そういう事実なども、知らないよりは知ってくると、ただギャンブルだけでは片付けられない面白みは出てくる。もちろん、競走馬自体が美しくて早くて格好良いってのが、何より惹かれる部分だよね〜

そして、競馬予想がめちゃくちゃ楽しいので、こんな楽しい事が、どうして皆わからないのかしら〜とは思ったりする。
想像力を働かせる事や、データを蓄積していくという嬉しさ、レース前のパドック、前日からのわくわく感、終わった後の気持ちあれこれ、いろいろな事を感じる事が出来るってのが、たまらない魅力になっている。何年経っても飽きる事がなく、脈々と受け継がれていく血を見ているのも、ロマンがあって楽しい。

たかが動物、たかが馬、人が走っているわけではないのに、と言う人もいるが、ちょと違うんだよな。逆に人が速さを競って走っているのなんて、毎週見せられたらさほど面白くないかもしれない。だから、公営競技にマラソンがないのでは?


私がこの先死んだ後、競馬という文化は間違いなく廃れてしまうと思う。同じ時代を一緒に生きる事が出来た、たくさんの大好きな馬たちの血も、いつかは途切れてしまうのだろう。
イギリスのように、皇族が進んで競馬という文化を楽しむ事は、日本にはないし、ギャンブル性が高くて、敬遠されがちなものという認識が変わらなければ、ますます廃れていくのは目に見えている。

来年こそ、もう少し競馬という趣味を通じて何かに関わりたい。そして、競走馬の未来について、悲観的にならなくて済むようにしたい。


私は自殺をする人については、特にコメントはない。だってもう自殺した段階でその人は終わっているから。
自分で終わりを決めた人に対して、言う言葉なんてない。そう思っている。

ただ、私もかつては自分で自分の命を終えてしまおうと思った事があったので、心の弱い人に対してめいっぱい責める事も出来ない。今でも時々、そんな気持ちに近くなる事もあるけど、自然死するとしても、自分から絶つにしても、その時間の差は、40過ぎた今とはっては、たいした差ではないかも。だったら、じたじたしながらでも、数センチずつでも、進むしかないからねっ

青木騎手の死因や細かい事はわからない。だけど何も今死ななくても良かったのに…年間騎乗数が少ない辛さだけでなく、きっと計り知れない色々な辛い事があったのでしょうけど、もうひと踏ん張りして欲しかったな。

さて、元気に生きている私は、さっさとやる事をしなくちゃ。