11年目の命日

今日は父の命日。11年前父が息を引き取った時間に、家の中で黙とうした。

この11年の間、私は母のように父が頻繁に夢の中に出てくることはないし、遺影や記念になるものは手元にないので、時々父のことを忘れている日もある。

父の会社の社訓というかの影響もあって、キリスト教に関する行事ごとを職場で行っていた。子供の頃は良く分からなかったけど、クリスマスに会社からホールケーキが支給されて、イースターにもイベントがあるなど、家族も関わる機会が多かった。

今振り返ると、まったくキリスト教は関係がない業界だと思うけど、社長さんが信仰しているとかってことだったのかな。未だに謎。

母の親族は別の宗派だし、母はキリスト教はまったく興味や関心がなく、イエス様の教えも全く耳には入らない人だ。

小学校2年か3年くらいの頃に「日曜に近くの教会学校へ行け」と父から言われ、一緒に教会へ行って手続きした。その後毎週通うようになると、母は日曜も朝から家族の食事の支度をする事に文句を言っていた。

聖書を何ページor節ごとに読むと、用意されたカードにスタンプが押してもらえて、そのスタンプが埋まると、御言葉が書かれているカードをもらった。もらう度に父に見せると「良かったな」「いいな」と言ってくれた。

思いやりを持って相手に接する事、嘘をつかない事、日頃からの父の教えだった。それはキリスト教の教えだと思っていたけど、教会学校に通って、成長してから違うとわかった。違うというか、間違えではないけど、キリスト教の本質は別のところにあるからね。

でも、父は信者ではなかったし、私にそれを勧めようともしなかった。教会学校の先生たちは、勧めはしなかったけど、そういった環境を何度となく作り、さりげなく促していた。

母方の妹である、時々記事でも書いてきた叔母は、あらゆる宗教について詳しかった。叔母の母、私の祖母はガチガチの某仏教なので、毎日お寺に祖母を連れて行ってた。祖母が何十分かお経を読んでいる間、一緒に手を合わせていた。夏休みには私もそこへ一緒に行っていた。

人に優しくすること、愛を持って接すること、良い行い・・・徳を積むことなどなど、どの宗教でも教えの中に共通しているように感じた。

何度か父に問うたことはあった。どうして世の中にこんなに宗教がたくさんあるのか、父はどうしてキリスト教信者にならなかったのか、会社から怒られなかったのか。

その時私の疑問に明確には答えてくれなかった記憶がある。ただ、理屈無く、良い事は良い、そうでないことはしない、愛は尊いものだとは話してくれた。

だから、私には宗教の違いがいまひとつ理解できないし、何か1つを信じることは良いのかもしれないけど、崇拝して依存して心のよりどころにしながら一生一緒に生きていくってのは理解できない。

社会人になってからも、特定の宗教信者と接する場面があったので、同じように質問をしてみたけど、結局落としどころは「でも私が信じている神様だけが本物だ」と言われてしまい、やっぱり根本的な私の疑問は解消されないままだった。

父が病気になって、余命宣告を受けて、その周りで醜い人同士の争いを体験した。父は散骨を強く希望していた。仏教の行事ごとや、宗教がからんでくるようなものは、一切しなくていいと言われた。周りからのいろいろな横やりに耐えて、出来るかぎり父の言う通りにした。残念ながらお墓だけは作らなくてはいけなかったけど。

あの頃、どんなに一生懸命お祈りをしても、あっけなく父は死んだ。この世には神様はいないと、はっきり悟った瞬間だった。もし、神様が私や父を愛しているなら、応えてくれたはずだと、そんな風に思った。

そして、あの頃から私はひとりぼっちだった。全ての人が敵に見えるような気がしていた。信じられるのは自分だけだと思った。

人は死を恐れ、見た事がない死後の世界を恐れる。その恐怖をどう乗り越えて穏やかに死を受け入れるのか、宗教の教えによって実にバリエーションが豊富で、それもまた理解が出来ない。

生前父は良く言っていた。「俺が死んだら俺(自身)は何もわからないんだから、葬式だの墓参りだの、無駄な事に金を使うな。一周忌がどうしたとか、そんなのもいらない」

すべて父の言うとおりにできなかったし、未だに母は月命日にお墓に行かないと気が済まないみたいだけど、父の気持ちを尊重しながら今も生きている。

今日はどうにか母を説得できた。「これは明らかに不要不急だ」と言い切った。「父もそこまでしてお墓に行っても絶対喜ぶはずはないと思う」と、母に何度も言った。

納得はしてないとは思うけど、母は私の願いを聞き入れてくれた。ほっとした。次にいつお墓へ行けるかと聞かれたけど、「早く行けるといいね」としか言えなかった。

夜は親友が電話をくれたので、少し長話してしまった。とりとめのない話というか、近況報告というか。そんなこんなであっという間に1日が終わろうとしている。

さて、ゆうべとはうって変わってやっと静かな夜になったので、今夜も現実逃避をば←結局それかい(笑)

 

 

2020.5.8 0:08AM