ビル・エヴァンス 「タイムリメンバード」 を観てきた

4月下旬に公開と分かり、そこから行く日を決めようとしたけど5月は行けず・・・でも、どうしても見たかったので、関東(神奈川)ではたぶん上映は最後かと思われる今日、なんとか行けるように調整してきた。

ジャズが好きな人なら、知らないとモグリと言われるビル・エヴァンスドキュメンタリー映画で、日本以外では2015年に公開されていたらしい。

このために昼間超頑張って仕事を終え、はるばる行ってきたのは、新百合ヶ丘にあるミニシアター「川崎アートセンター」

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駅からもまあまあ近く、すごくきれいな施設で、しかも今日が最終日だったので、混んでた。ほぼ満席で上映がスタートした。

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7月も、今月も、見たい作品があって、そんなに頻繁にはこれないよーと思いながら観た。来月クリムトのドキュメンタリーがあるんだもん。超見たい。それ以前に、クリムト展に行きたい。どうにか来月すべりこみたいんだけど・・・

 

ビル・エヴァンスチャーリー・パーカーマイルス・デイヴィススタン・ゲッツスコット・ラファロトニー・ベネット・・・このあたりの方だったら、自分でもCD持っていたり、NHKラジオ「ラジオ深夜便」での2時台のエンジョイジャズでも良く聞くお名前なので、ここ十年くらいで、一気にいろいろ覚えていった。しかしジャズは奥が深すぎて、たぶん生きている間にすべてを知ることは出来ないかもしれないな~

ビルを知る人、ビルと過ごしてきた人たちのインタビューをメインに、彼の作品を合間に流すという構成での90分の作品だった。リアリティ以外の何物でもない、ビルの人物像や一緒に過ごしてきた人たちの思いはとても良く伝わってきた。

ビル・エヴァンスのピアノは、美しくて繊細だと良く言われる。それに、とにかくイケメン!!ピアノに向かって手元を見ずに猫背で弾く様子が、そりゃもう格好いい!

そんな自分を知ってか知らずか、彼はモテモテだった。音楽使ってオトすだなんて、これだけ才能がある人を、女性はほっとかないのもしょうがない。

現に内縁関係だったエレインという女性がいるにも関わらず、子供を産んでもらいたくて他の女性と浮気して、エレインを自殺にまで追い込んでおきながら、すぐ新しい彼女と結婚。でもそれも長続きせず、若い子に手を出したりと、そりゃもうやりたい放題なビルだったようで。

若いころの兵役時代から、ずっと麻薬漬けの日々が続き、一度は更生して薬を抜いたのに、また手を出し、ヘロイン中毒になって、仕事にまで影響するようになった。きっと薬の影響で、アップダウンが激しい演奏になってるのかな、とか思う節はある。薬やったことないからわからないけど、そういう浮き沈みですら、演奏ではそれすらも生きているようだった。

そんな風にして常に薬がないと生きていけない身体になっても、演奏はやめなかったらしく、休みも取らずに世界中で演奏をしていたらしい。ヘロイン代稼ごうとしたのか、わからないけど。

ビル・エヴァンストリオのメンバーが次々と変わっていったのは、彼の(人間性)問題があったかららしい。つくづく思った。神は二物を与えないんだな。

周りを不幸にしても、自分の身体がボロボロになっても、音楽だけは止めなかった。しかも、あんなにエレガントな演奏をずっとできるなんて、才能なんだろうけれど、本人の情熱が何があっても冷めなかったから出来た事なのでしょう。

晩年、最愛の兄をなくしたことがきっかけなのか、ヘロインを45分に1度打つくらいのジャンキーになり、それでもむくんだ顔をひげや髪で隠しても、ライブ活動は止めなかった。それだけが彼の居場所だったのかな。

「美と真実だけを追求し、他は忘れろ」という彼の言葉は、まさに彼の生きざまそのものだったと思う。美に関しては、あの鍵盤への繊細なタッチを見てもわかる。紡ぐ音の美しさは、これまで彼のバックグランドを知らなかった私が一番惹かれたところだった。

トニー・ベネットの話はちょっとぐっときた。まだご存命だったとは!大ベテランというか、そういう言葉じゃ片づけちゃいけない、おそらくアメリカでの彼の位置は、相当なものなのではないかと思う。日本だったら、誰に匹敵するんだろう。いないかも・・・

感動とか、そういうたぐいの映画ではなかった。何しろビル自身のクズっぷりは、何も感動できない。映画というよりも、ドキュメンタリー特番観たって感じかな。彼の人間性は驚くことが多かったけど、周りの人たちの生の声が聞けたという、貴重なフィルムを見せてもらえたことは良かった。もっと私がファンだったら、もっと胸が熱くなっていたかも。

こういうミニシアターでも、満席になるほど、ビルのファンっていたんだなぁと、当然の事なのにあらためて思った。もっと大きな映画館でやってもいいのに。良いものを見せていただきました。

 

 


Bill Evans Quintet - Time Remembered